校長室便り
2018年12月31日
スケールの大きな高い山

みなさんこんにちは。私は今マレーシアから「校長室だより12月号」を書いています。これまで様々な国に行きましたが、校長着任以来、特に最近はアジアに目を向けています。今年は政権交代して、後継者を育成するため93歳で首相の座にカムバックした元小児科医のマハティール氏率いるマレーシアを選びました。地元テレビや街歩きで活気のあるアジアの国を肌で感じ、多文化で多様な人々に触れながら、成城の12月を振り返ります。

1.早稲田大学出張講義

12月5 日に、高大連携の一環で、早稲田大学理工学術院教授の小岩正樹先生をお招きしてご専門である建築に関わる話題で出張講義をしていただきました。

早稲田の理工模擬講義301205

古今東西の住宅建築を取り上げ、当時のライフスタイルを読み取る、さらには、歴史的な着眼から建築物の中にある文化思想を読み解くという大変興味深い内容の講義でした。例として外壁を作ってから住宅を作る建築様式と、逆に内側から外に向かって作っていく建築様式を挙げて文化の違いを説明するなど、大変わかりやすく生徒たちにも面白い話だったと思います。希望する生徒が聴講する形でしたが、中学2年生も混じっていて驚きました。改めてこの場を借りて小岩先生にお礼申し上げます。

2.部活動のこと

私事ですが、高校時代は女子山岳部に所属していました。同学年の部員が5人いて、夏には飯豊連峰や南アルプスの縦走などをして寝食を共にした仲間です。その5人がこの12月東京駅のイルミネーションの近くで再会しました。全員がそろったのは何十年ぶりのこと。話し始めれば皆、高校生の時のままです。

女子山岳部②

それぞれが個性豊かに、多様な生き方をしている5人の仲間たち。聞けば、歩いてきた道は、それぞれの高校時代から続いている道でした。私を含め、道草あり寄り道ありでしたが、一人ひとり当時と変わらぬものが貫かれていました。

この12月、公立学校の教師に対して「学校における働き方改革特別部会」によるガイドラインの案が示されました。教員の超過勤務については部活動が要因の一つであることは間違いありませんので、能率よく働くことを模索しなければなりません。しかし、自らの高校時代にも経験したような、互いに刺激しあう友人がいて部活動を通して成長していく教育環境を、いかに効果的に学校教育に生かしていくかを考えることが大事です。特に文武両道の成城では今後大きな課題となります。

 3.川合真紀さんの講演会

不思議な月でした。高校時代の同級生とも再会しました。日本化学会初の女性会長になった川合真紀さんが母校で講演をすると後輩から連絡が来て出向きました。この日後述する成城高校の卒業生を彼女に紹介するつもりでしたが、彼の大学の試験と重なり、結局一人で行きました。「化学って面白い」と題した講演を母校の制服を着た後輩たちが聞いている姿をみて嬉しくなりました。川合真紀講演会

私たちの学年は高校3年の10月に学園紛争により自宅待機となり卒業式がなく、同級生とは自宅待機以来ほとんど会ったことがありませんでした。川合真紀さんともそれ以来の再会でした。当日は彼女を囲んでタイムスリップ。通学路を歩き寄り道をしながら帰りました。

4.2学期終業式

高校の終業式で話した一部を紹介します。指定校推薦に合格して化学科に進学した大学1年生の成城高校卒業生の話です。合格後、受験勉強に必死なクラスメイトを見て自分も何かに真剣に取り組もうと、在学中に取り組んでいた化学の研究を再開し、卒業後の四月にそれを論文にまとめ、九月にある雑誌に投稿しました。しかし結果は「掲載不可」。そこで彼は大学の実験講義を担当する先生方にこれまでの話をしました。すると「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)でもないのに研究を指導してくれるとはすごい高校だ。」と言われて、「自分がやりたければどこまでもできる学校です。」と返したそうです。一方、論文を読んでくれた同期の女子学生に、旧帝大志望だったこと、そして「受験はうまくいかなかったけど、後悔はないよ。やりきったから。」と言われて、気が付いたことは「やりきること」だと、改めて論文を執筆している、という話をしました。

実は終業式の数日後、彼から「本校化学科の水野教諭との共著論文が掲載されることとなった」とメールが来ました。彼が中学生の時に日本学生科学賞で受賞した研究論文を読みしたが、まさにその発展で医療分野での活用に目を向けていました。

5. グローバルリーダー研修報告会

恒例となった「グローバルリーダー研修報告会」が12月15日(土)に開催されました。聴衆と研修参加者で小講堂の座席が一杯になったのを見て感無量。これらの行事への関心の高さが伺えました。今夏に実施されたグローバルリーダー研修(エンパワーメント・プログラム、オーストラリア研修、台湾研修)の報告を準備、運営、司会、発表のすべてを、研修に参加した生徒たちが行いました。これも、グローバルリーダーへの一歩です。男子校特有のユーモアを交えて体験を語る生徒たちの姿は頼もしく、プレゼン能力も高くなってきたと感じました。終了後、報告会に参加した方々からご要望やご提案も頂きました。校内で検討してさらなる研修の向上に活かしたいと思います。

これらの研修を通して、生徒は海外に目を向け始めました。日本協会が主催する「ジュニアフェロー・リーダーシップ・プログラム」という3週間のアメリカ研修があります。毎年開催される研修内容が素晴らしく日本全国から10 人の高校生が選ばれて参加するプログラムですが、本校から3人目の合格者が出ました。高校2年生の彼は3月の出発に向けて研修が始まっています。またどこかで研修報告会の機会を作りたいと思います。


かつて、JAXAで小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーをされた川口淳一郎先生が「すそ野が広くないと悠々と高いスケールの大きな山はできません。」と仰っていたことがいまだに耳についています。

今回、高校時代から何十年もかけて今の自分を作っている友人たちや、中学時代から好きな実験をやり続けている成城高校卒業生のことを話題にして原稿を書いてみました。企業の人事担当者は「高校時代」を見るとも聞きます。勉強以外にじっくりと時間をかけてやったことは、失敗したり寄り道だったりと、一見無駄に思えるかもしれないけれど、大きな山を作るために必要なすそ野の広がりのように思います。

文武両道の成城生に伝えたいメッセージです。部活動のみならず真剣に夢中になれることを、中学時代、高校時代のかけがえのないこの時にこそ、目先の失敗を恐れず、やりきることです。今ここから君の人生につながっていきますよ。成城生、そして受験を控えた未来の成城生のみなさん。悠々と高い大きな山を目指して頑張りましょう。

皆様、どうぞよいお年をお迎えください。

平成30年12月31日    栗原 卯田子

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