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高校生平和大使 「微力だけど、無力じゃない」

-高校生平和大使・田口くんが見つめた“対話”と平和のかたち

核兵器廃絶と平和を訴え、国内外で活動する「高校生平和大使」。
第28代高校生平和大使として選ばれた高1の田口征志郎くんは、スイス・ジュネーブをはじめとする国際舞台で、同世代の代表として声を届けてきました。その原点には、成城での平和学習と、受け継がれてきた思いがありました。

■ 平和大使を志したきっかけ

-高校生平和大使に応募しようと思った理由を教えてください。

最初のきっかけは、担任の先生からもらった平和大使募集のチラシでした。そこで“高校生平和大使”という存在を知って、参加してみたいと思いました。
これは、中学1年生の頃から『無限の瞳』という映画を通じて平和学習を受けてきたことも大きいです。成城がかつて陸軍の士官学校だったこと、そして広島で被爆した先輩がいることなどを聞いてきたことで、核兵器や戦争の問題を、他の高校生よりも身近なものとして感じてきました。
「自分にも何かできることがあるのではないか」と思い、応募を決めました。

■ 「無限の瞳」とつながる思い

-映画『無限の瞳』から、どんなことを感じましたか。

印象的だったのは、一人ひとりの「助けたい」という思いが集まって、大きな力になっていく場面です。病気の生徒を助けるために、学校の中だけでなく他校にも募金を呼びかけるシーンがありました。『一人の力は小さくても、集まれば無力ではない』ということを強く感じました。
高校生平和大使のスローガンに『ビリョクだけど、ムリョクじゃない』という言葉がありますが、それは『無限の瞳』の精神とも重なっていると思います。
(参考)成城生徒会 自主制作映画「無限の瞳」(1955年)※YouTube

■ 選考で伝えた、自分の強み

-選考では、どんな点をアピールしたのですか。

小学校の頃から人前で話すことが好きで、自分の考えを言葉にすることにあまり抵抗がありません。高校生平和大使は、国連でのスピーチや講演など、大勢の前で話す機会が多いと聞いていました。そのため、「人前でも臆せず、自分の意見を伝えられること」、「対話が好きであること」を、自分の強みとしてしっかり伝えました。

■ ジュネーブでの活動

-ジュネーブではどのような活動をしてきたのですか?

ジュネーブ訪問の大きな目的の1つが、1年間で集めた署名を国連に届けることでした。111,071筆の署名・目録を、国連のメラニー・レジンバル軍縮部所長に手渡しで提出しました。これは高校生平和大使としての活動の集大成ともいえる経験でした。
また、国連の軍縮会議を傍聴させていただきました。そこでは、ベネズエラでの米国の潜水艦をめぐる議論や、宇宙空間への兵器・核・デブリ放出の責任、AIやロボット兵器などの新型兵器の規制、NPT(核不拡散条約)に関する議論が行われていました。予定より大幅に時間が延び、通常は30分程度で終わる会議が1時間以上続き、非常に貴重な場に立ち会うことができました。
国連軍縮研究所(UNIDIR)では、24名いる高校生平和大使の中から、東京(※田口くん)・大阪・広島・長崎の4名が代表としてプレゼンテーションを行いました。UNIDIRでのプレゼンは、28年続く高校生平和大使の歴史の中で初めての出来事であり、『ビリョクだけど、ムリョクじゃない』という理念を伝え続けること自体に大きな意味があると実感しました。

■ 「対話の力」

-活動の中で、特に印象に残っている経験は?

たくさんあります。1つは、JICA平和構築室の大井綾子室長とお話しさせていただいたことです。戦争や対立は不満や誤解の積み重ねから生まれること、そしてそれを解消するためには「対話」が不可欠であるということを強く実感しました。核兵器廃絶も、戦争をなくすことも、日常の小さな衝突を減らすことも、すべて対話につながっていると感じました。
また、特に大きかったのはジュネーブでの活動での世界YWCAの訪問です。交流の中で、「まず自分自身の価値を信じることが大切」という言葉をいただきました。自分の考えを一番信じられるのは自分自身。そこから意見を深め、発信していくことで、少しずつ輪が広がっていく。その考え方は、その後の活動にも大きな影響を与えています。

■ 海外から見た「日本の高校生」

-海外では、どのような反応がありましたか。

『被爆国・日本から来た高校生』という存在に、強い関心を持ってもらえました。多く聞かれたことは、「どういう思いで活動しているのか」、「核抑止についてどう考えているのか」といった質問でした。色々な立場で、平和について真剣に考えている人たちでしたので、僕たちの話をとても真剣に聞いてくれました。

■ 街頭署名活動のリアル

-署名活動で大変だったことは?

思ったより街の人の反応がありました。でも、素通りされる方も多いです。
難しいのは、興味を示してくれている人を、実際の署名につなげることです。「どういう活動なのか」と聞いてもらえたときに、短い時間で分かりやすく伝える工夫が必要だと感じました。
活動に賛同し、署名の仲間に加わってくれた同級生もいます。対話を重ねる中で、平和について行動に移そうとする人が増えたことが嬉しかったです。

■ 将来と平和活動のつながり

-今後の進路や夢に、活動は影響していますか。

将来、宇宙飛行士になりたいという夢があります。
宇宙飛行士は、国籍や文化の違う人たちと協力して働く仕事です。だからこそ、平和や国際問題について考え、対話してきた経験は、将来にも必ず生きると感じています。

■ 「自分自身の価値を信じる」

-最後に。

今回の活動を通じて、「まず相手の話を聞く姿勢」と「自分の価値を信じること」の大切さを実感しました。
すべての人に自分の考えがそのまま伝わるわけではありません。だからこそ、自分の意見を一方的に押し通すのではなく、互いの考えに耳を傾け合える関係を大切にしたいと考えています。
そうした対話の積み重ねが、少しずつ信頼を広げ、平和へとつながっていくのだと思います。


映画『無限の瞳』がつくられてから、約70年が経ちました。
そこに描かれていた「一人ひとりの思いは小さくても、集まれば社会を動かす力になる」というメッセージは、時代を越えて、今も確かに生き続けています。
田口くんの言葉や行動からは、その精神が単なる学習としてではなく、自分自身の価値観として受け止められ、世界へと発信されていることが伝わってきました。
過去の歴史と向き合い、対話を大切にしながら平和を考え続けてきた本校の歩みが、こうして次の世代の行動につながっていることを、私たちは誇りに思います。
本校の平和への願いは、これからも本校の教育の中で受け継がれ、広がっていくことでしょう。

 

以下のリンクからも活躍の様子がご覧になれます。

2025 “Arms Control Person(s) of the Year”(2026年1月14日)
https://www.armscontrol.org/pressroom/2026-01/2025-arms-control-persons-year-winners-announced

軍縮の賞に高校生平和大使24人 国連へ反核署名11万筆提出で(2026年1月16日)
https://373news.com/news/national/detail/2026011601001908/

高校生平和大使が2025年「軍備管理パーソン・オブ・ザ・イヤー」に(2026年1月21日)
https://mainichi.jp/articles/20260121/k00/00m/030/109000c

JICA:高校生平和大使と考える平和の築き方/戦後80年(2025年8月8日)
https://www.jica.go.jp/information/topics/2025/p20250808_01.html